詩誌「なだぐれあ」第8号(1990年8月発行)所収
安藤鳴人相談室⑧
あたし未婚のOL、33歳……
【質問】あたし未婚のOL、33歳になります。けっしてブスではないと思います。才色兼備、眉目秀麗、趣味好尚、家庭円満、人畜無害、奇癖皆無。陽当たりの良いお部屋で何不自由なく暮らし、ピアノとオ花とオ料理を習いながら、オヨメに行く日を夢見て今日まで暮らしてまいりました。……ああ、それなのになぜかこうして目尻にコジワ、シミソバカス、プロポーションの崩れに、ひとの陰口。ソバージュヘアもあちらのヘアもクモの巣もどきになる今日この日まで、口惜しくも独身のままで過ぎてしまいました。
ボーイフレンドは学生時代から、降る星の数ほどおりました。♪きのうマー坊、今日トミー、明日はヤン坊かマー坊か、二人合わせてヤンマーだ、君とぼくとで夢は夜開く~とやってきたわけでもありませんが、時は過ぎ、人は去り、現在は未婚既婚の殿方数人しか手持ちがなくなってしまいました。いつしか、男性に対する鑑識眼も肥えてきて、ますます理想の結婚が遠のいてゆくようです。ああ、あと2年でマル高マーク。どうしたらいいのでしょう。
あら、ごめんなさい。鬱陶しいお話しでウンザリさせてしまいました。まあ、そんなわけで安藤先生にグチのひとつもこぼしてみたくなったのでございます。あたくしの幸多き未来のために、どうぞお導きの灯りを高くおかかげくださいまし。(悲劇のOL)
【答え】そうですか。ご苦労なことです。国勢調査や厚生省人口問題研究所の調査報告などに目を通すと、昨今の結婚難は農家のヨメ不足などという形で、男性の側の苦労ばかりを問題にしているようなフシがありますが、実はこうして女性の側にこそ人知れぬ深刻さが広がっているということです。いつの世も結婚の理想は不滅、しかし現実は理想通りにはいかず、いきおい独身生活の自由さに舞い戻るという人が多いのでしょう。海老坂武さんがおっしゃるような<シングルライフの気ままさ>なんてマユツバで聞かなきゃだめですよ。
去年の3月13日NHK夜8時「家族の肖像」という特別番組で、家族評論家の小浜逸郎さんが「人生80年時代。定年後20年も24時間同じ顔を見て暮らすことになるわけだから、よほど気の合う男女じゃないと……」という意味の発言をしていました。しかしこれも首をひねらざるをえません。結婚とはひとつ屋根の下で暮らす男女の安寧を国が保障するシステムにすぎないのです。そう割り切れば、べつに気なんて合おうが合うまいがどうでもよろしい。
そもそも人生80年時代というその数字には、時代的なカラクリがあります。数年前から「平均寿命」の算定対象年代の範囲には、いわゆる戦中派世代が繰り込まれはじめました。そして戦後25年経ったいま存命中の戦中派は歴史的にすごい困難な時代を潜り抜けてきた強靭なバイタリティーを備えているいる人たちばかりなのです。こんな人たちをサンプルにしても、このわけのわからない現代を生き抜く人々の平均寿命まで今後どうなるかなんて、言い当てることはナンセンスなのです。少なくとも戦後のモノのない時代に幼少期を送った世代に限っていえば、この人たちが「平均寿命」のサンプルに繰り込まれる21世紀を少し過ぎる頃には、日本人の平均寿命はガタ落ちになること請け合いです。
したがってつまり、昨今の晩婚の風潮は、平均寿命が延び続けているというそのトリッキーな数字を背景にしているフシがあるのですが、こんなことはとんでもない誤解です。大地真央の出る生命保険のCMに「♪花の命はけっこう長い~」なんていうのがありますが、こんな言葉に踊らされてはいけません。
* * *
≪編集部より≫実勢平均寿命などとうに過ぎてしまった感もある安藤先生でした。さて、長らくご愛読いただいたこの「相談室」ですが、急転直下、今号で連載終了となりました。次なる連載に向けて、先生はすでに新たな構想を練り始めておられるようです。ではそれまでのあいだ、みなさまどうぞお元気で。
コメント
築山恵美子です。形部と言った方が良いのかも知れません。
お久しぶりです。ひょんな事からこのブログに辿りつきました。
もし、連絡可能ならメールでもいただければ有り難いです。
コメントご送信、ありがとうございました。
今日私のパソコンを面倒見てくれているエンジニアさんから「コメントが1件入っていますよ」と連絡があり、
遅ればせながらお礼のメールをお送りする次第です。
お元気そうで何よりです。明隆さんもお元気のことと思います。
築山君の命日が12月3日、福田博道君の命日が8月1日(2019年=水頭症に苦しむ晩年でした)なので、
ちょうどその二つの日付の中間をとって去る10月5日に<築山・福田両君を悪口で偲ぶ会>を開いたばかりでした。
𠮷田裕さん、高橋裕司くん等が集まりましたが、宮下和夫さんも鬼籍に入り、佐伯修くんも車イス生活になり、参加者は年々少なくなります。
去年の12月は奈良に出向いて安田有さんんと2人で<築山君を悪口で偲ぶ会>を開きました。
少しづつ寒くなります。どうぞご自愛に努めてくださいませ。