安藤鳴人相談室③ 痛恨のサヨナラエラーを…

詩誌「なだぐれあ」第3号(1988年9月発行)所収

安藤鳴人相談室③

痛恨のサヨナラエラーを……

【質問】安藤先生こんにちわ。ぼくは17歳。都立高校3年です。つい先日まで野球部に入ってました。うちの野球部は進学校ですが、そこそこ野球は強かった。しかし今年の夏、都の大会では2回戦で敗退してしまいました。敗因はなんとぼくの痛恨のサヨナラエラーだったんです。あのときからチームメイトとは疎遠になってしまいました。
 そして今、ぼくは立ち直れなくなっています。今年やっとレギュラーの座を掴むこのとのできたぼくは、チームメイトと甲子園を夢見て、雨の日も風の日も野球一筋にうち込んできたのです。それが誰あろうこのぼくの責任でこんなことに……。ぼくは今、恐ろしい予感に捉われて夜も眠れない毎日です。
 大学入試のときとか、就職試験のときとか、結婚初夜のときとか、重大な決断をするときとか、今後の人生のいろんな瞬間に「アッ、ぼくはあのとき痛恨のサヨナラエラーをした人間なんだ」という思いがふと脳裏をかすめるに違いありません。そしてその結果、入試にも、就職にも、結婚にも、重大な決断にも失敗しちゃうことでしょう。ぼくは人生の落ちこぼれになってしまうような気がしてなりません。そう考えるとゾッとして眠れなくなるのです。先生、こんなぼくを救けてください。(エラー恐怖症の球児より)

【答え】今年も甲子園の季節がやってきましたね。甲子園のドラマというのは、実はこういう悲惨な精神のドラマでもあるんだなあと、今しみじみ感慨に耽っているところです。
(本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に際し、親しく全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、戦陣に散り、戦火にたおれた数多くの人々やその遺族を思い、今もなお、胸がいたみます。……)
 君は8月15日の天皇陛下のお言葉を聴きましたか? 君たちにはよく解らないかもしれないが、毎年8月15日に天皇が陳べる言葉はいつも同じ言葉なのです。これをマンネリじゃないか、と非難してはいけません。一度発せられた天皇の言葉は最高のものだから、1年経ったからといってコロコロ変わったりしてはいけなのです。
 では天皇は戦没者追悼式典に出席するとき、「あの戦争は失敗だったナア」などという小市民的なルサンチマンにとらわれたりするでしょうか。いえ、AB型の天皇のことです。戦争責任のことなどもうすっかり忘れて追悼文を読み上げているのにちがいありません。
 相談者クン、あなたの悩みを解消する秘訣は、実はそこにあるのです。つまり、あなたも天皇陛下になればよいということです。いいですか、ノーテンではありませんよ、テンノーですよ。そのためには今のうちから、まずAB型を目指しましょう。血液型改造計画です。まあ、若いときの失敗などすっぽり記憶から抜け落ちずに、ちゃんと憶えているうちが花ですけどね。

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≪投稿規定≫皆様からのご相談を受け付けます。深く「人間」を凝視し続けてこられた人
生の達人であられる安藤先生が、あらゆるご質問にお答えします。あなたとともに悩み、ともに考え抜く謙虚な姿勢から発せられる珠玉のお言葉は、必ずやよるべない心に希望の灯をともし、明日への力を与えてくださることでしょう。
 投稿にあたっては以下の点にご留意ください。氏名、住所、年齢、性別を明記のこと。金銭的・法律的相談、家庭トラブル、医学上の質問、単なるグチなどはご遠慮ください。安藤先生は小市民的な問題を何より嫌われますので。また、掲載の際、匿名を希望されても、決して「匿名希望」とは記入しないでください。先生はこれも小市民的心理として退けておられます。(しかしご心配なく。当編集部が適宜適切な配慮を施します。)