2010年6月28日、越谷市、大相模不動尊(大聖寺)山門、水彩

山形県尾花沢市にある母方の菩提寺、通称法華寺のその山門には2柱の仁王さまがつねに信徒を睥睨していて、幼いころはその脇をくぐり抜けるのが何よりも怖かった。お寺への恐怖というものは私たちの世代くらいまでなら誰もが共有している感情だろうと思う。わが越谷に鎮座まします大相模不動尊も、その山門を初めて見たとき、すぐにあの尾花沢の仁王さまを思い出させてくれたのだった。
この絵を描くのはいちにちでは済まなかった。このころから老父母への介助に時間が割かれてしまうようになり、描いている途中でも二、三度帰宅せざるをえなかったからだ。そういう意味で、家族の老化状況を絵具の重なりの中に刻印してある記念碑的一作ではある。
ちなみに、この大相模不動尊にほど近い越谷市大成町という新興住宅地では、今から二十年ほど前になるか、哀切な殺人事件が起こっている。一時期、各週刊誌も大きく扱っていたので、ご記憶のかたも少なくないかと思う。少年少女二人を健やかに育てつつある若夫婦が、たまたま奥さんのバイト先に現れた一人の男と大三角関係になり、虫も殺さない性格のそのご主人が愛妻と間男を包丁で刺し殺してしまったという事件。この事件の当事者たちは私より少し下の世代であり、仁王さまの神通力などというものはどこ吹く風の世代の悲劇ではあった。