久伊豆神社

2010年7月27日、越谷、久伊豆神社、水彩

 この日、愛用の携帯折りたたみ椅子を参道に置いて腰掛けると、まもなく社務所から人が飛んできて、「ここは神様の通り道だから、居座られるのは困ります」と云う。「2、3時間なら神様も許してくださるのでは」と問い返すと、苦笑しながら頷いてくれた。この人の話によると、久伊豆神社を描きに来る人は、みなさん、こんな狭苦しい参道ではなく、ひろびろとした境内の端のほうに腰掛けて描くのだと。なるほどそうかもしれない、参拝客の往来から離れたほうが絵筆に集中できるとは思う。でも、私のインスピレーション君はこの時、確かに「ここしかないだろ」とささやいたのだ。
 鉛筆の下書きを済ませ、絵筆を走らせはじめるとまもなく、両親に手を引かれた小さな女の子が私のそばに立ち止まり「おじちゃん、塗り絵好きなの?」と訊いてきた。「好きだよ。お嬢ちゃんは?」と訊き返すと、「あたしも大好き」と。六十歳の風景画も三歳の少女の塗り絵も、心さえピュアであれば価値は等しく、どちらも気高いのだ。