三ノ輪橋駅

2009年4月3日、東京、都電荒川線三ノ輪橋駅、水彩

 三ノ輪には昔からよく通った。永井荷風ゆかりの浄閑寺あり、樋口一葉記念館あり、中江(馬肉レストラン)、土手の伊勢屋(天麩羅)あり、はたまた昭和の香り漂うセンベロ(千円でべろんべろん)の飲み屋がいくつもあるからだし、山谷の横丁で信じられないくらい安価な日用品を探すのもなかなかオツなので…。町屋の錦寿司あたりでランチタイムに一杯やったあと、都電荒川線で三ノ輪までやってきて三ノ輪商店街で我が家にナスの包み揚げを買って帰るのも家族には喜ばれるし…。
 この日、そんな三ノ輪の都電駅風景を描こうとスケッチブックを開くと、駅構内を清掃していたおばさんが「この場所に座って絵を描く人、けっこういるんですよ」と。目に見えぬそのライバルたちに負けじと、せっせと絵筆を運んでいると、ひっきりなしにホームレスたちがひやかしにやって来る。鼻がもげるほど、彼らのにおいはひどい。身体の垢のにおいと酒のにおいのアンサンブルで攻めてくる猛者もいる。それでもやっぱり、人としゃべくりながら絵筆を進めるとき、ミューズはほほえみかけてくれるように思うのだ。