2014年6月22日、パリ、モンマルトル、サクレクール寺院、水彩

私がパリに滞在するときの常宿はオスマン大通りの北側に建っていて、部屋からはモンマルトルのサクレクール寺院がよく見える。ある朝、「さあ、今日はどこに出かけて何を描こうか」と窓を開けると、このモデルさんがおもむろに「たまにはあたしを描いてちょうだいよ」と媚を売ってきたので、この日はその願いを叶えてあげることにしたのだった。
ところで私には、若いころフランス・アルプスのメリヴィルというスキー場(F1ドライバー、アラン・プロストの別荘があり、ミハエル・シューマッハが瀕死の事故を起こしたゲレンデとして有名)で知り合って以来、長くお付き合いしている10歳ほど年上のフランス人ご夫妻の友人がいる。訪仏のたびごと、地方各地でスケッチを終えた後パリに戻ると、このご夫妻はいつも私の常宿までクルマで迎えに来てくれて、予約しておいてくれたレストランで一緒に夕食をとるのがならわしになっている。彼らが「哲王、今回はどんな絵を描いてきたの?」と尋ね、私がスケッチブックを開いて、描いてきた土地土地のみやげ話をするところから私たちの夕食は始まるのだ。
そんなあるとき奥さんがつぶやいた。「あんたの描く空は、どうしていつも青空なのかしら?」――この思いがけない問いかけに面食いながらも、そのとき私が選んだ返事は「青空は希望の色だから」だった。なんのことはない、パレットを開き、絵筆を走らせはじめる際にきまって、「青空よ、ずっと青空でいてくれよ」「曇り空よ、早く青空になってくれよ」と祈りながら、ホルベインのセルリアン・ブルーに筆先をつけてしまうのがいつものやり方なのだから。
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